コンテンツへスキップ

恵方巻き

2月初旬のある朝、珍しくスズメのえらくはしゃいだ鳴き声で目が覚めた。まだ繁殖の季節でもあるまいにと目をこすりつつ庭を眺めると、庭石の上に二つの黒い筒状の物体が2本あり、円筒の端面をスズメが2羽交互に突っついているのであった。よく見るとその円筒は黒々とのりを巻いた太巻きのように見える。家族に問いただすと、昨年食べ残した恵方巻き2本を冷凍保存しており、それを今季解凍して庭石の上に置いたのだという。予想もしなかった挙動であった。
2~3日の間スズメ饗宴は続いた。そしてある朝スズメの声がしないので庭石のほうを見ると、そこには黒い円筒は見当たらず、代わりに雪の上に黄色い長いものと、黒い傘の断面形状のようなものが散らばっていた。不審に思い庭に出て確認してみると、黄色い長いものはかんぴょう、黒い傘はしいたけの切ったものであった。どうやら犯人は近くの木に長年住みついているカラスのように思われる。あれだけの量を全部平らげてしまったらしい。かんぴょうとしいたけは甘党のカラスには口にあわなかったのではないか。
ま、これは私の妄想かもしれないが、犬だったら全部平らげたのではないかと。
カラスもかあと鳴かずに黙って恵方を向いて食ったのだろうか。