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雲南市近代たたら実習(2) 稲藁で髪を束ねた女神

酒作りなどと同様、たたらも神事であるようだ。実習の作業場には常に神棚があり丁重に供え物がしてある。火入れ式はまさしく神事で、神官こそいなかったが、玉串を供え、二礼二拍手一礼で良い鉧が出ますようにお祈りする。
たたらの神様はなんと女神である。しかしあまり美しい神さんではなかったようだ。髪はばさばさで稲藁で束ねてあったとか。なんでも播磨の国のほうから白鷺にのってやってきて桂の木に止まっておられるところを、安部の某という猟師の犬が木が光るのを見つけて吠えるので、発見されたのだとか。そのまま村下(たたらの技師長)となって製鉄技術を伝承されたのだとか。
本来のたたらは5日サイクルで月6操業、年60操業されたものらしい。12計算が合わないのは梅雨時の2月は湿気を嫌い操業しなかったからである。
5日のうち3日間は不眠の作業になるらしいが、その間村下の妻は髪をばさばさにし、化粧はしなかったらしい。金屋子の女神の嫉妬を恐れたからである。
面白いことには金屋子の神が祭ってあるのはたたら場の下のほうである。それほど崇め奉られていたわけでもないのだろうか。
たたらを司るのが女神というのは、たたらの釜の形を思えば容易に連想される。釜は子宮なのかも。そして火入れ後最初に出るノロを初花といって餅のようなものを焼いて祝う。
die Kama なんちって。
金屋子神は死を好むといったような何とも怪しげなことも言われるようだ。たたら場の柱に死体をぶら下げておくと鉄の出来がよくなったというような。木火土金水の五行思想からきているようだ。隣り合わせの二つは相性よく、一つ飛ぶと相克しあうというやつかな。
死は土で鉄は金で土生金、というわけか。
あやしいなあ。じつにあやしい。